トワイライトエクスプレスやG20でシェフを勤めた日本屈指のフランス料理人のレストランが豊能に。「人を楽しませたい」思いが美味しい料理を生み出す源。
Text by Shinichiro Nakanishi

半年ほど前に豊能町にオープンしたレストラン「Le tonotn」へ家族でランチをいただきに出かけた。
なかなか時間が取れなかったので、前日からワクワクしていた。
因みにLe tontonさんではEMMA COFFEEのコーヒーを食後に提供していただいている。
日本を代表する料理人のお店で提供して頂けるなんて、身に余る光栄であり、背筋の伸びるお話でもあった。

Le tontonはオープンして間もないが、すでに遠方からも客が訪れる大人気店となっている。
料理が美味しいかどうか、と言う話はもうする必要がないと思う。
今回の訪問では、「なぜ中田さんの料理がそれほどまでに人を惹きつけるのか」を理解する貴重な体験ができた。

12時から開始のランチを予約していた。

僕たち家族3人と、同席していた上品なご夫婦の5人で食事がスタートした。

すぐに中田さんがそのご夫婦を僕たちに紹介してくださった。
「今日は僕の恩師が来てくださっているので、昨日の夜からちょっと緊張気味なんです(笑)」

同席していた西川さんと言う方は、なんと中田さんの師匠に当たる人で、トワイライトエキスプレスや九州・沖縄サミット等で一緒に料理の腕を振るった、日本を代表するフレンチシェフだった。

まさかそんな方と同席できるとは思わず恐縮してしまったが、お話し好きのものすごく楽しい方で、各国首脳へ出した料理の話や、その時の裏話などを聞かせていただき、とても楽しく和やかに食事が進んだ。

一品目の自家製ベーコン

Le tontonはカウンター8席と座敷が1つ。

カウンターは中田さんが調理をするスペースと仕切りなく繋がっていて、レストランと言うよりは中田さんの家の台所にお邪魔していると言う感覚に近い。

キッチンを動く姿、目の前で手早く盛り付ける手の動きがとても美しかった。

因みにガス台と盛り付け台の間の通路はトワイライトエキスプレスのキッチンと同じ幅で設計したそうだ。

1人で動くのにちょうど良い幅なのだそう。

「中田くんの料理はパーツが多いなぁ」と西川さんが中田さんに言う。

後から聞いたが、この日使った野菜の数は36種類もあったそうだ。

僕は意識していなかったが、品数の割には確かに素材の数が多いと思う。

たくさんある素材を、それぞれの素材が一番生きる調理方法で手を加えて1つの皿に盛り付けていく。

見た目も当然美しいが、食べた時に口の中で全体が調和する感覚がすごい。

ソースなども加えるとかなり沢山の素材があるのに、全体のバランスが絶妙で、無駄なものが1つもないと感じた。

「料理をひとつひとつ丁寧に作る」という言葉を良く耳にするが、中田さんの場合そのレベルが全然違う。

本当に「ひとつひとつ」なのだ。

野菜に火を入れるのも、ジャガイモも1個ずつ、フランス産のアスパラも1本ずつオーブンに入れて火を入れていく。

「食材にはそれぞれに言い分があります。それぞれ太さも大きさも違うので、様子を見ながら1個ずつ調理していきます。仲間にはアホちゃうかって良く言われます(笑)」と中田さん。

野菜だけで36種類。肉や魚介も入れるとそれ以上の食材全てに同じ熱量で調理している中田さんの姿勢は、ちょっとクレイジーだと思えるほど凄かった。

スープは完成までじっくり3日間かけて作られる。

元は体の悪いご両親の為に開発したそうだ。

リウマチでスプーンを持てないお母様が、器を持ってスープが飲めるように丸い形状の特製の器を作ったそう。

1〜2種類の野菜、麹、オリーブオイル、塩のみで作られるシンプルなスープだが、飲むと体全体に幸せが染み込んでくるような感覚になる。

このスープの為だけにでも行ったほうがいいと思う。

食後のコーヒーはフランスにいた時から愛用しているというビアレッティで
自家製シフォンケーキとEMMA COFFEEのBLEND#1

食後のシフォンケーキは手でちぎりながら食べた。

食べたことないぐらい軽いケーキで、口に入れると甘い香りを残してフワッと消えるようだった。

中田さんにビアレッティで淹れていただいた僕のコーヒーは、いつもよりちょっと美味しく感じた。

トワイライトエキスプレスのパンフレット。西川さんと中田さん。

コーヒーが出来上がるまでの間、西川さんがギターで「over the rainbow」を歌ってくださった。

「震災の時にクラプトンがこれ歌ったんだよ」と楽しそうだった。

西川さんはいつもズボンのポケットにハーモニカを入れているらしい。

居酒屋で隣になった人とでもすぐに仲良くなるそうで、ハーモニカでもふきながら人を楽しませるのだろう。

中田さんと西川さんはいろんな料理の話や、今後の日本の料理人の話をされていたが、お二人の思いの中心には「人を楽しませたい」「美味しい料理で人の喜ぶ顔が見たい」と言うシンプルな思いを常に持っている人達なのだということを感じた。

おそらく料理を志す人の誰もが持つ思いだと思うが、そのシンプルな思いをブレずに貫いてきた強い意志をお二人から感じた。

帰り際に「昨日から『どうやったら中西さんに喜んでもらえるだろう』と考えながら料理を考えていました。今日僕は中西さんの彼女になったような気持ちで一生懸命作りました。美味しいと言っていただけて本当に嬉しい。」と中田さんに言われて、ちょっと泣きそうになった。

嬉しかったと言うよりは、「この人カッコ良すぎる」と感動したからだ。

料理人として登り詰めたと言っていい方のセリフとしては庶民的というか・・・なんと言っていいのかわからないが、僕には忘れられない言葉だ。

中田さんと色々お話をしたが、料理が大変とか、しんどいと言う言葉を聞いたことがない。

料理が大好きで、人を楽しませることが本当に大好きなのだ。

いつも目を輝かせて料理をしている中田さんは本当にかっこいい。

中田さんの料理が人を惹きつけるのは、そんなピュアな思いが食べる人に伝わるからだと思う。

中田淑一 
豊能町在住。
辻調理師専門学校 を退職しLe tontonを開業。
32年間,食を通して多くの学生にメッセージを伝える。
2000年『九州・沖縄サミット』、
2014年 寝台特急『トワイライトエクスプレス』の最後を飾るメニュー開発
食育本の執筆などにも携わる。

Instagram

HP

Writer Profile
中西 信一朗

中西 信一朗
Shinichiro Nakanishi

大阪府豊能町生まれ 20代前半に「おもしろそう」という理由でトロントへ渡りコーヒーショップで働き始める。カナダでの生活、人や文化、ヘラジカが好きになり、カナダ人になることを本気で計画するも、家の事情で実家の豊能町へUターン。 2014年、家業である中西商店を引き継ぎ、店舗の一角でEMMA COFFEEを開業。 2021年、中西商店を全面的に改装。あらゆる人が自由に過ごすことができる「公園」を作ることを目標に中西商店をリニューアルし、多様なイベントやプロジェクトを企画。同時にEMMA COFFEEを自家焙煎化し、オリジナル商品の開発やコーヒー豆の卸にも力を入れている。

中西商店/Emma Cofee
〒563-0219
大阪府豊能郡豊能町余野172-5

172-5 Yono,Toyono-cho,Toyono-gun,Osaka
Tel:072-739-0789
E-mail:info@emmacoffee.com